第5回生涯学習講座「もっと知りたい田中一村」を開催しました(11/22)
11月22日(土)、第5回目となる生涯学習講座「もっと知りたい田中一村」を開催いたしました。

今回の講師には、笠利町赤尾木在住で、中学校の美術教諭でもある鈴木明美氏をお招きしました。鈴木先生ご自身のこれまでの歩みと田中一村への熱い想い、そしてユニークな実技指導と、大変充実した内容となりました。以下、当日の様子をご報告します。

■講師プロフィール紹介:田中一村に導かれ、奄美へ
講座の前半では、鈴木先生がどのようにして田中一村と出会い、奄美の地へ移住するに至ったか、そのドラマチックな経歴をお話しいただきました。
鈴木先生と一村作品との出会いは平成17年。初めて訪れた田中一村記念美術館で受けた衝撃は計り知れないものでした。翌平成18年には「一村さんに会いたい一心」で奄美へ。飛行機の窓から見えた虹、そして一村が実際に見て感じたであろう奄美の空、雲、海の色、力強い植物たちの姿に、深く心を動かされたといいます。
東京や神奈川で教員生活を送る中、子育てを経て臨時任用教員として復帰。神奈川県女流美術協会での知事賞受賞や日仏美術展入選など、作家としても活躍されていましたが、「一村さんの奄美で絵を描きたい」という想いは募るばかりでした。
転機が訪れたのは平成20年。奄美市教育委員会での採用が決まり、小宿中学校へ赴任することになります。軽自動車に画材や生活用品を詰め込み、意気揚々と奄美の地を踏んだ日、これで念願の絵が描けるという喜びに満ち溢れていたそうです。
移住後は、教職の傍ら精力的に創作活動を展開。奄美市美展での大賞受賞をはじめ、数々の公募展で入選・受賞を重ね、現在は委嘱作家や美術協会の会員推挙を受けるなど、奄美の地で芸術家としての根を深く張っていらっしゃいます。
■静寂の中で自然と向き合う、特別な実技の時間
鈴木先生の情熱的なお話に続いた後半は、これまでの講座にはなかった展開となりました。なんと、参加者全員での「実技」の時間です。


用意されたのは画用紙と、先生が準備してくださった奄美の草花、そして石。 「画用紙に水平線を一本引き、そこへ石を『立神』に見立てて描いてみましょう。そして、これらの草花を配置してみてください」 鈴木先生のその言葉で、会場は一瞬にして静寂に包まれました。


参加者の皆さんは、目の前のモチーフと向き合い、それぞれの画用紙の上にそれぞれの奄美の風景を描き出していきます。机の間を静かに巡回し、一人ひとりの作品に温かい眼差しを向け、時折アドバイスを送る鈴木先生の姿は、まさにベテランの中学校美術教諭そのものでした。
巡回中に先生が何気なく発した「絵は自由です」という言葉は、普段絵を描くことから離れている大人の参加者たちにとって、肩の力を抜いて「ただ描いてみたい」と素直に思わせる、十分な動機づけとなったようです。

■受講者の反応
講義を聞くだけでなく、実際に手を動かし、モチーフを観察して描くという体験は、田中一村が向き合った自然への視点を追体験するような特別な時間となりました。


静かな熱気の中で行われた実技は、受講者の皆様にも大変好評で、「時間を忘れて楽しめた」「一村の世界により深く触れられた気がする」といった感想が多く寄せられました。非常に満足度の高い講座となりましたことをご報告いたします。
ご参加いただいた皆様、そして貴重なお話とご指導をいただきました鈴木明美先生、誠にありがとうございました。

