日本画家・田中一村が魅せられた奄美は、大いなる生命力に満ち溢れた植生と激変する気象の踊り場です。自然が提供する画材に命懸けで立ち向かい、誰も描いたことのない新しい日本画を作り上げました。多くの作品は田中一村記念美術館に収蔵され、成し遂げた偉業を間近に観て感じる事が出来ます。私たちは「世界自然遺産の島・奄美」が画家に描かせたものは何であったかを作品のなかに探り出してみることが可能となりました。

2024年9月19日から12月1日までは東京都美術館で「田中一村展 奄美の光 魂の絵画」が開催され、主催者のひとつNHKは、多くの特集番組を放映し、新たな田中一村ファンを創造しており、奄美市でも代表作の多くを収蔵している美術館を、市民(島民)のためにどのように活かしていくのか議論が進められています。しかし、そうした活動の責任を行政にのみ背負わせていいのでしょうか。

いま、田中一村の魅力を自然遺産と結び付け、芸術全般の興隆へと発展させ、一過性の観光に止まらない新たなエコツーリズムを創造するためには、縦割りの制約に縛られない、持続可能なNPOの活動こそが求められています。

私どもは任意団体「フォーラム奄美23」として、2023年5月に島根県津和野町からお二人の講師をお招きし、「美術館を活かしたまちづくり」をテーマに講演会を開催いたしました。パネルディスカッションでは津和野町が取り組んできた文化事業のありようを、行政側から下森博之町長に、美術館側からは安野光雅美術館の大矢鞆音館長にお話をしていただきました。

津和野町では、2001年の安野光雅美術館設立時に「美術館協議会」を立ち上げ、以来23年に亘って行政と美術館双方が一堂に会し、様々な議題を話し合って来たと伺いました。全国的に名前が知られた田中一村を、観光産業の担い手として活用する方途を探るため、大勢の人が参加できる場が必要なのではないか。それが、本会を発足させるに至った経緯です。

「全国的に名前が知られた田中一村を、観光産業の担い手として活用する方途を探るための場を創る」という課題解決に向け、私たちはこれまで、上記「美術館を活かしたまちづくり」の他、2024年10月6日には「フォーラム奄美24」として「未来へつなぐ田中一村」を開催いたしました。会場のアマホームPLAZAは2階席まで埋まる盛況で、関心の高さを実感することとなりました。

今後は、本趣旨と方向性を一にする団体や個人との関係性を深めつつ、全国に100万人いるといわれる「田中一村ファン」と奄美をつなぐとともに、奄美の魅力を全国あるいは海外に向けて発信し続け、クリエイターがあこがれる「アートの島」の担い手の育成につなげ、「美術館を活かしたまちづくり」に貢献して参ります。また、啓蒙活動として、年1回の講演会の開催と「もっと知りたい田中一村」をテーマにした市民講座の開催を目指します。さらに、多くの若者を呼び寄せるため、公募展(奄美日本画大賞展)の開催を企図いたします。

今後、地域全体へ活動範囲を広げていくため他地域の行政や団体との連携・協働を深めていく必要があること等の観点から、社会的にも認められた公的な組織にしていくことが最良の策であると考えました。また多くの市民の方々に参画していただくことが不可欠であるという点から、特定非営利活動法人格を取得するのが最適であると考えました。

法人化により本会をコアとした地域連携がしやすくなると考えられ、他の組織とのさらなる連携や協力によって活動内容の充実を図ることができ、ひいては地域社会に広く貢献できるものと考えます。

2025年2月28日